そこは、この賑やかな街の高台に建つマンションだった。

 駅にも近いのに、これだけの緑が溢れた場所があることに驚いた。とても静かな通り。蒼生くんの家はそのマンションの最上階にあった。

「……」

 他のマンションに比べれば世帯数は少ないようだけど、それでもこの立地の最上階って……。

「ごめん、ちょっと部屋片付けてくるから、待ってて」

「……うん」

 蒼生くんはそう言うと、5分か、それ以上か、部屋の中を急いで片付けているようで、私はドアの前でしゃがみ込んでいた。

『帰りたくない』なんて自分で言っておいて、こんなふうに家まで来ちゃうなんて……自分で動揺しているのが分かる。