「新菜?」 

「……」

「どうした? 送っていくよ」

 振り向いた蒼生くんは、そっと私へ手を伸ばした。

「……帰りたくない」

「え?」

「……」

「また、なんかあったのか?」

「……蒼生くん()、泊めて」

「……」

 大通りからの明るい街灯のあかりを背にうけ、蒼生くんは真っ直ぐ私を見つめた。

 さっきもだけど、学校で会う蒼生くんとは雰囲気が違って見える。私なんかよりもずっと年上のような……手の届かない人のような……。

「さっきのこと何とも思わないのか?」

「え? さっきのこと?」 

「さっき話したろ。今までいろんな悪さをしてきたって。警察のお世話にもなってるし、だからあんな奴らにだって狙われたりするんだ。そのとばっちりを新菜は受けてるんだぞ?」

「……」

「それなのに、俺のこと恐いとか思わないの?」

 私はそっと首を振った。

「新菜……」

 恐いなんて思わない。

 私は学校での蒼生くんが本当の蒼生くんだと思ってる。

 人の悩みを解決していきたい。そういった蒼生くんを、本当の蒼生くんだと信じてる。

 私は真っ直ぐ蒼生くんを見つめた。