「蒼生の女なら都合がいい。アイツを呼べ」

「!?」

「早く電話しろ!」

「いやよ!」

 思い切り払いのけると、スマホがガチャンと大きな音を立てて落ちた。

「きゃああ!」

 私の態度に近くにいた男が強く髪を引っ張り上げた。

「いたい!」

「だったら、早く蒼生をここへ呼べ!」

「そんな必要はないな」

「!」

「蒼生!」

「……蒼生く……ん」

 目の前からゆっくりこちらに歩いてくる蒼生くんの姿。

 あきらかにいつもとは違う蒼生くんの表情。

 長い前髪から覗く鋭い目に、怖いと感じた。

 こんな蒼生くん、私は、知らない……。