少しずつ暖かさを感じるようになった4月。

 それでも夕暮れは早く、少し帰りが遅くなれば一瞬にして辺りは暗くなり、街灯も家々の明かりも灯り始めていた。

 その日も、いつもより帰りが遅くなってしまった。急いで帰って自分の家を見上げても、そこに明かりはない。

 ま、わかっていることだけどね。

 こんなのいつものことで、家に入るとダイニングのテーブルの上には『今日は遅くなるから』と書かれたメモと1人で食事をしろというように3千円が置かれていた。

「3千円。ずいぶん豪華な食事ができそうじゃん」

『今日は遅くなる』

「……今日“も”の間違いでしょ」