「あ! ごめん! 私行くね」
「柚?」
慌てて小走りに去っていく柚の後ろ姿は、なんだか跳ねるように嬉しそうに見えた。
見つめた先、柚は一直線に吉岡先生に向かっていた。そして嬉しそうに話しかける姿は、見ているこちらが微笑ましく思えた。
「柚は、もしかして……」
「え?」
蒼生くんの言葉に私は振り向いた。翔太とひな子はもうすでに違う話に夢中になっているけど、蒼生くんは柚を見つめ、柚の気持ちに気付いているようだった。
そうだよねぇ……『黙っていて』なんて自分で言ってたのに、柚の行動は誰にでも分かってしまうくらい露骨に見えた。
まったく柚は……。
でもそんなところも柚っぽい。
「……」
「? 蒼生くんどうしたの?」
柚を見つめる蒼生くんの様子がいつもと違う気がした。