両親の前に、小刻みに震えた詩音が立った。

 気付けば、ミッションの案にはなかった、陸くんの優しいピアノが弾き続けられていた。

 お客さんたちは、詩音の両親に「素晴らしい!」と声をかける。照れるようにうつむく母親と、頑なに険しい顔を崩さない父親。

 詩音はそっと私たちの方を見た。

 蒼生くんと、私と、目が合う。

 私たちはそっと、うなずいた。

 詩音はもう一度両親に目をやると「音楽を続けていきたい」そう言った。