『これが私!』
このお店には似つかわしくない激しいピアノと力強い歌声が終わると、そこに居たお客さんたちから大きな拍手が起こった。
スタンディングオベーションというものなのか、みんなが食事の手を止め大きな拍手を春見詩音へ送った。
みんなが春見詩音の歌に聴き入る姿、それを両親は不思議な様子で見ていた。
「きっと、どんなに素晴らしい成果をあげ、結果を残していても、両親は自分の娘のその姿を見たことがなかったんだろう。だから春見詩音の夢への想いも理解することなんて出来なかった」
曲が終わると、スクリーンには春見詩音の今までのコンクールの映像が映し出され、テロップにはその功績が流れた。
そこには大きな会場で拍手喝采を浴びる美しい春見詩音の姿が映っていた。
どれだけ春見詩音が自身の力で頑張ってきたのか、その力は嘘ではない。
たくさんのコンクールでの素晴らしい結果は、春見詩音自身が自分の力で勝ち取ったものだ。それは親が恥じることも、否定出来るものでもない。
それを証拠に、店内に現れた美しいドレスを身にまとった春見詩音は普通の高校生ではなかった。凛とした後ろ姿、力強い歩みは、すべての人に認められるだけの資格があることを物語っていた。