陸くんのピアノは続き、同じ曲を再び弾き始めると、ピアノに合わせるように声が聴こえた。

 それは、春見詩音。

 美しい歌声が店内に響くと、お客さんは再び手を止めた。

 まるでその声に引き寄せられるように耳を傾ける。それは、春見詩音の両親も同じだった。

 そして両親の目の前にかけられたスクリーンから映し出されたのは、春見詩音がピアノに合わせて歌う姿だった。

「え!? 詩音!?」

 母親の驚く声が聞こえた。

「な……なんで詩音が!?」

 驚きのあまり勢いよく立ち上がり、ガタンと椅子の音がタイル張りの床に響く。

「おい。いいから座れ」

 驚き立ち上がった母親を押さえるように父親が手を伸ばし、落ち着くように言った。

 ピアノに合わせるように歌う春見詩音の歌声は、今までの結果が分かるくらいの美しい声を響かせ、それを聴いていた人々が賛美のため息をもらした。