その日の夜お店に現れたのは、春見詩音の両親だった。

 両親には「懸賞で食事券が当たった」という理由で、この店に呼び出したのだ。

 有名なレストランだけあって、仲が悪いという両親も綺麗に着飾り2人でその場に現れた。

「すごいレストラン用意したね……」

 お客さんが集まり出したフロアを見ている蒼生くんへ、私はコソコソと声をかけた。

 とてもじゃないが高校生の私たちなんかで、こんなレストランを借りることなんて出来るわけがない。このミッションを成功させるために蒼生くんが考えたとはいえ、規模が大きすぎる。

「この間言ったろ、柚がすべて手配してくれたんだ。柚の叔父さんがこの店を経営しているらしい」

「あ……ああ、そうなんだ」

 だからか。さすが行動が早いと思った。

 柚がこのお店の偉そうな人と親しそうに話しているのは、そんな理由だったんだな。

 翔太とひな子は、これから起こることへの準備のため、別室で確認作業をしている。そして陸くんはタキシードに身を包み、ピアノの前に座っていた。