「考え事は、春見詩音のことか?」

「うん……まるで私みたいだなって思って。どうにか夢を諦めずに済む方法はないのかなって」

「私みたい? だからこの春見詩音を新菜は見つけ出せたのかもしれないな」

「うん、私もそう感じたんだ。私のこのインスピレーションは自分のことがあるからかもしれない」

 だから、悩みを抱えている人の気持ちが感じ取れるのかもしれない。

「新菜……それは、俺も同じかもしれないな」

「蒼生くんも?」

 それは、どういう意味?

「大丈夫」

 蒼生くんはそう言うと私の頭にぽんと手を乗せた。

「絶対上手くいく方法を考えたんだ。もうさっそく柚が動いてくれてる」

「蒼生くん……」

「必ず成功させる。だから次のターゲットのことももう考えておかないとな」

「次のターゲット?」

「ああ」

 ターゲットが決まってからの蒼生くんの行動は本当に早い。メンバーのみんなも行動を起こすことをある意味楽しみにしているようで、蒼生くんの指示が飛べばすぐに動きだす。

 蒼生くんはこのSSFの仕事をどんどんこなしていきたいと思っているみたいで、それはどこか焦りにも似ているように思えた。