「新菜ー!」

「起きてるよ」

「……」

 パジャマのままリビングに顔を出した私に一瞬驚いたママの顔。そしてすぐに、

「いつまでそんなカッコしてるのよ。遅刻するでしょ!? 早く着替えなさいよ。いつも遅刻ばっかりで、また学校に呼ばれたりするの嫌だからね!」

「……」

 まくしたてるように言葉を連ねるのは、自分の予想外が起きた時。

 ママはどんなことをしても私には否定的だ。それは自分の支配下におきたい表れなんだと最近気づいた。

「何よ」

「……」

 ママをジッと見つめた私に「何か文句ある?」とでもいいたげな冷たい言葉。

 きっと、春見詩音も私と同じ、親との生活は崩壊しているんだ。何も出来ない。自分の望むことは出来ない。夢さえ見れない。ただ、親の言うことだけを聞いて生きてゆく。

 そんなこと地獄でしかない。

 子供の人生をなんだと思っているんだろう……。

 春見詩音は両親との修復は難しいのだろうか。

 話し合って歌手という道を認めてはくれないのだろうか。

 いろんな思いが自分と重なって、日々考えるのはターゲットのことばかりになっていた。