春見詩音は、物心ついた時から両親の仲が悪く、可愛がってくれたのは祖母だった。歌が上手かった祖母は、いつも歌をうたって聴かせてくれたそうだ。
それがきっかけで、自分も歌をうたいたいと思うようになったという。
祖母の血なのかその才能は開花され、祖母の力もあって、いろんなコンテストやオーディション、歌の大会に出ることができていたという。
だが、祖母も歳をとり、病気がちになってくると両親の監視が厳しくなった。
歌についてのことは禁止に、大学も音楽関係ではなく、普通の大学へ進学すると勝手に決められたという。
唯一の味方だった祖母が亡くなり、夢への期待も持てなくなってしまったということだった。
「新菜! 新菜!! 早く起きなさい!」
「……」
いつものように家中に響き渡るような、かしましい声に、起きたばかりの私は頭を抱えた。
今日は一段とキンキン声のママ。またイライラしているのが分かる。
毎日の朝の寒さも比較的和らいで、目を覚ました後の体の動きも軽くなってきた。
それでも毎朝こんなふうに起こされたら、体は拒否反応を見せる。