あれは、今日みたいに遅刻した日のことだった。

 ホームルームぎりぎり間に合いそうだと急いで教室に向かうと、私のクラス2年A組の教室の前にすごい人だかりが出来ていた。どこから集まったのか、他のクラスの女子たちの群れ。
 いつもこんな騒ぎになるようなことはないのに、集まった女子たちの様子はアイドルでも見つけたような黄色い悲鳴を上げていた。

 この騒ぎはいったいなんなのか……。


「ほらー、おまえら自分の教室に戻れよー」

 うちのクラスの担任が騒ぐ生徒たちに声をかけた。他のクラスの先生が自分のクラスの生徒たちを連れ戻しに来ている。渋々、教室に戻って行く女子たちは、なぜか後ろ髪ひかれるような素振りを見せていた。

 私にはこの訳のわからない騒ぎはラッキーだった。

 それぞれの教室に戻って行く女子たちを潜り抜け、遅刻した素振りも見せず、こっそりと後ろのドアから教室に入ろうとしたその時……。


「安達 新菜ー! また遅刻かー」

「……」

 バレた……。

 同時に前のドアから教室に入ろうとしている担任に声をかけられた。