「ねえきみ、あまり辺りを見回しすぎると世界が平坦なことに気が付きやしないかい」


《平坦》


「世界は言葉と音と光で満ち溢れているね。音はあの日を、光は過去を、言葉は気づきに変わるね。それっぽっちさ、あまりそれ以上は取り入れないほうがいい。自分が何者かわからなくなるよ。世界に蔓延る言葉や文字に汚染され、どうだい、この存在も最早誰かの模造品だ。あるものをなぞるからだ。母は僕を、レプリカに育てた。それは二番煎じから剥がすため、偉人や先人類が遺した言葉を舐めて反芻してる間に、僕らは1秒毎に自分の存在を知らしめる方法を失くしている」


《そんなのは本を読めない人間の戯言だ》


「そうかな、例えば仮にこの年まで僕が言葉を知らずに生きてきたとしよう。僕はかろうじて国語を学び、読み書きを把握しているけれど、余分がないよ。何も知らなければ模造品だなんだと言われない、触れなければその危険性にも侵されない、誰が僕を評価するのだ、僕は何もなぞってない、大衆よ、有触れた言葉をなぞって偉そうに、僕を貶す言葉すら不鮮明じゃないか」


《お前は何を言っている》


「話が逸れたね。比喩も揶揄も僕の評価に値しない、文字を見なければ辺りを見回さなければ、映像と音と光、それで僕は構成され光合成が出来るだろう。外部は猛毒だ、汚染。誰かの言葉なんて遮断するがいい、宇宙や星の暗喩すらなんだか不鮮明だ、信者め」


《お前は何を言っている》







 名の知れた有名な物書きの一部は読む人間に殺される。

 こうあるべき、この作者、待っていた、言葉が違う、いつもと、らしさ、らしさ、いつも、あるべき、そんながんじがらめはお前らの固定観念だ。作家が筆を折るとき、それは誰かの言葉に汚染された物書きが自分を見失うからだ。



 という、一つの見解があるとする。