「どうぞ」と声がして瞼を離すと、母がティーカップの載ったソーサーを差し出していた。お礼を言って受け取る。

 「チーズケーキ食べる? さっき作って、まだ温かいと思うよ」

 「食べようかな」

 母は静かに頷いて、再びキッチンに入っていく。

 私は椅子から腰を上げて、こたつ布団の中に脚を入れた。ほかあっと暖かくて、凍てついたような素足が溶けていくように心地いい。

 紅茶を一口飲んで、「はい」と差し出される皿を受け取る。裏側がまだ温かい。

 母が正面からもぞもぞとこたつに入ってくる。脚を曲げる必要はない。数年前にこの大きなこたつに買い替えたけれど、やはりこれくらいの大きさがあった方がいい。以前のものでは、家族三人も入れば脚は正座か胡坐にしなければならないようだった。

 「もう日曜日か。また明日から学校だね」

 「うん」

 私はチーズケーキを一口、口に入れた。過去に洋菓子店で商品を作っていた経験がある上、趣味がお菓子作りというだけあって、母の作るお菓子はおいしい。

 「まだ冷めてないでしょう」

 「うん」

 「学校はどう?」

 「普通に楽しいよ」

 「勉強も大丈夫?」

 「まあ、人並みに」

 「そっか。それはよかった」

 母がティーカップに口をつけるのと同時に、私はチーズケーキを口に入れた。

 「……おいしい」

 母が穏やかに、控えめに、笑うのを感じた。