荷物を片付けて、自席で文庫本を読んでいると、「やあ少年」と押村さんに肩を叩かれた。「やあ少女」と応えると、彼女は「ん?」と、器用に方眉を上げた。「なんか楽しそうだね」

 「普通だよ」と返すけれど、実際、とても楽しい。というか、幸せだ。

 「なんかあったのかい?」と、押村さんはおれの言葉がないもののように言う。

 「再会だよ」と答えてみる。

 「なにをやり直したんだい」

 「再開じゃない。再び会ったんだよ」

 「ほう。巡り合わせってやつだね。ずっと願ってたんだ?」

 「まあ、そうかな。思い出す度に、会いたいと思ってた」

 おれは本を閉じて、机の中にしまった。

 「そりゃあおめでたい。今日の放課後、好きなジュースでも奢ってやろう」

 「いや、いいよ別に」とおれは苦笑する。

 「じゃあもち米と小豆を買ってこなきゃいけないね」

 「赤飯炊く気じゃねえか」

 「タイ料理の方がお好みで?」

 「それなら和食の方が好きかな」

 「国じゃない」と押村さんも苦笑した。