校門をくぐったところで「やあ少年」と押村さんに肩を組まれ、「やあ少女」と応える。

 「朝なに食べた?」と押村さん。

 「目玉焼きトースト」

 「私お茶漬け。わさびと鮭フレーク」

 「おお、おいしそう」

 「おいしかったよ」

 押村さんはぐっと両手を突き上げて、息を吐きながらだらんと下ろした。

 「とせちゃん、今日もくるかなあ?」

 「どうだろうねえ。でもあれから二日続けてきてくれたし、なんだかんだで毎日きてくれるんじゃないの?……部活もどきって言って、休みの連絡も要らないみたいなこと言ってたけど、こない場合は放っておくの?」

 「どうしようねえ」と、押村さんは大した問題ではないかのように天を仰いだ。そのどこかに、不安のような恐れのようなものを感じるのは、おれ自身のものか、押村さんが秘めやかに感じているものか。

 「青園って、実際のところどんな人なんだろうね」

 押村さんは天を仰いだまま、少しだけ首をこちらに向けて、大きな目でおれを見た。「高野はどう思う?」

 「え?」

 え、じゃなくてと押村さんは笑う。「そのままの意味だよ」と言って、改めて空を見る。「高野自身はとせちゃんのこと、どんな人だと思うわけ?」

 「いや、別になんとも……」

 「そう?」

 「うん。なんで?」

 「いや……」ぽつりと、「そっか」と言って、押村さんは俯いた。

 その様子に尋ねたいことが胸の中に沸いて、言葉に直していいものかと悩んだ末に、「押村さんはどう思うの?」と口にした。

 「私?」

 「青園のこと」

 「私は……」そうだな、と押村さんは呟く。「うーん。友達になりたい人、かな」

 「……押村さんって、なんでそう、大変な道を選ぶの?」

 「大変? え、そんなかっこいいことしたっけ?」

 「なんか、おれにも声掛けてくれたし」

 「だって、友達になりたかったんだもん」

 「それって、大変じゃん」

 「そうかな。私は、仲良くなりたいなって思った人と友達になろうとしてるんだよ。……あれ、なんか改めて言葉にすると意味わかんないな」へへ、と彼女は笑う。

 「高野だってそうだよ。仲良くなりたいなって、友達になりたいなって思って、声掛けたんだよ」ははっ、と笑う。「こう言うとなんか逆ナンみたいであれだけどね」

 ああそうだ、と、押村さんは思い出したように言う。「高野、なんでそんなこと思ったの、とか訊かないでよね」

咄嗟に考えてしまったことを言葉に直されて、おれは苦笑する。

「友達になりたいなって思うのって、恋するのと同じようなものなんだから。恋をするのに意味も理由もないんだからね」

 「恋……」

 「そう、恋だよ恋」

 「そっか、恋か……」

 胸の奥に蘇る愛おしい笑みに、彼女は今、どこでなにをしているだろうと考えて天を仰ぐと、隣で押村さんが笑うのを感じた。