「おれは、押村さんに声掛けてもらってね」と、おれは青園に答えた。「それで、なんか面白い感じになって、なんとなく」

 「揃いも揃って行き当たりばったりなんですね」

 「おれたちが計画練って動くように見える?」と、おれは苦笑しつつ肩をすくめた。

 「ねえ、とせちゃんのこと教えてよ」と押村さんが言った。

 「とせ?」と嫌な顔をする青園へ、「ちとせちゃんでしょう?」と押村さんは当然のように言う。「私はテディって呼ばれてるんだ、くまのぬいぐるみが好きだから。好きに呼んで」と。

 「いえ、押村先輩でいいです」と言う青園に、押村さんは聞いたかと言わんばかりにおれを振り返った。見事なまでのどや顔を見せつけてくる。「うんうん、押村さんはカリスマだよ」とおれは言った。押村さんは満足げに青園の方を向き直る。

 「誕生日は?」と押村さん。

 「六月二十六日」

 「おっ!」と押村さんが声を上げる。「聞いたか高野!」とこちらを振り返る。「六月二十六日だって!」と。

 「……なんかすごいの? 押村さんの好きな芸能人と同じとか?」

 「違うよ。私たちの誕生日は?」

 「……三月十三日。……あっ」

 「そうなんだよ! 三と十三を倍にすると、六と二十三になるんだよ!」

 奇跡だ、と押村さんは叫んだ。

 「私たち、三月十三日生まれなの」

 「さっき聞きました」と青園は冷めている。

 しかし押村さんは不思議な人だ。どうして、おれだの青園だの、関わるとこう面倒そうな人に自ら突っ込んで行くのだろう。疲れるだけではないか。単に誰とも分け隔てなく接せる人なのか、敢えておれや青園のような人を選んでいるのか。前者ならともかく、後者ならどうしてそんなことをするのだろう。

 「ね、ね、奇跡だと思わない!?」と話す押村さんの姿を眺めていても、おれにはなにもわからない。