「この……」なんでしたっけ、と青園は呟いた。「部活もどきを始めようと思ったきっかけはなんなんです?」

 「本当、ないよ」と押村さんが答える。「ただなんとなく、のんびりするだけの部活があればいいのになあって思ったの。それをこの副部長もどき――に高野に話したら、部活を立ち上げるにしても受理されなそうだし、部室も用意してもらえないだろうねって話になってね。そうしたら高野が面白いこと言い出したんだよ。それなら、部活もどきを作ってみればいいんじゃないかって」

 「本当にそれだけで作ったんですか」と青園は呆れたようだった。それに対して、「そうだよ」と、爽やかに返す押村さん。

 「でも、面白そうでしょう?」

 「どうでしょう。部員も集まるのか……」

 「集まるんじゃなくて集めるんだよ。まあ、ある程度集められたら自然と集まってくるかもしれないけどね」

 「なんでわざわざそんな大変なことするんですか」

 「だって、面白そうじゃん。実際、面白いし」

 「他の人にもあんな風に声を掛けるんですか」

 「そうだよ」と即答する押村さんに、「やめた方がいいですよ」と青園も同じように返した。「気持ち悪いですもん」と。押村さんは困ったように笑った。否定はできない、と言う声が聞こえてくるような笑い方だった。

 「で、高野山先輩はなんでこんなことしてるんです?」

 「こんなことって言った」と押村さんが苦笑する。「てかなんで高野だけ先輩認定されてんのよ」と唇を尖らせて声を上げる。

 「やっぱり先輩っていうのはカリスマ性が必要なんで」とへらへら笑って見せると、「高野のどこにカリスマ性なんかあるのよ」と飛んできた。

「だってさ」と言う押村さんに、おれは「もう死んでるから」と降参のポーズをとる。「スライムに必殺技使わなくていいんだよ」と。