誰かと一緒にごはんを食べる、というのは、久しぶりのような気がする。家では家族と食べているはずだし、実際にはきっと、そんなことはないのだけれど。
「玉子焼きじゃん」と、日垣さんのお弁当箱を覗き込んで、ホシさんが言った。「うちのプチトマトと交換しない?」
「ええ、嫌だよ。そのミートボールならいいけど」と日垣さん。
「なにっ、玉子焼き一切れのためにミートボールを要求するだとっ……? それはちょっと、ぼったくりってやつじゃない?」
「どこがよ。定価でしかないでしょうよ」
「割引きは?」
「今日はセールじゃないの」
ホシさんは渋々ミートボールを日垣さんのお弁当の中に置いて、玉子焼きを受け取った。
「味に文句つけたらもう一個ミートボール貰うからね」と言う日垣さんに、「じゃあ先に全部食べなきゃだめじゃん」とホシさんは言う。「なんで文句つける前提なのよ」と日垣さんが声を上げる。
なんだか、とても幸せな気分になる。
けれどふと、深い影に抱かれるような感覚がした。余計なことは言ってはいけない、という考えが湧いてくる。わたしは、大丈夫だよ、とその影に答えた。大丈夫、日垣さんもホシさんも、優しい人だよ。
「玉子焼きじゃん」と、日垣さんのお弁当箱を覗き込んで、ホシさんが言った。「うちのプチトマトと交換しない?」
「ええ、嫌だよ。そのミートボールならいいけど」と日垣さん。
「なにっ、玉子焼き一切れのためにミートボールを要求するだとっ……? それはちょっと、ぼったくりってやつじゃない?」
「どこがよ。定価でしかないでしょうよ」
「割引きは?」
「今日はセールじゃないの」
ホシさんは渋々ミートボールを日垣さんのお弁当の中に置いて、玉子焼きを受け取った。
「味に文句つけたらもう一個ミートボール貰うからね」と言う日垣さんに、「じゃあ先に全部食べなきゃだめじゃん」とホシさんは言う。「なんで文句つける前提なのよ」と日垣さんが声を上げる。
なんだか、とても幸せな気分になる。
けれどふと、深い影に抱かれるような感覚がした。余計なことは言ってはいけない、という考えが湧いてくる。わたしは、大丈夫だよ、とその影に答えた。大丈夫、日垣さんもホシさんも、優しい人だよ。