廊下を歩きながら、日垣さんは「今日の夜久さん、なんか雰囲気違うね」と言った。

　「……そうかな……」なんだか恥ずかしいような気がして、答える声が小さくなった。

　「今日の夜久さん、なんかかわいい」

　顔がかあっと熱くなって、とうとうなにも言えなくなった。

　「顔赤いよ、大丈夫？」と指摘されて、さらに熱くなる。

　「やめてよ、恥ずかしいから」と言うと、「言われ慣れてないの？」と驚いたような声が返ってきた。

　「嘘だあ、夜久さんみたいな人なら、毎日のように言われたはずだよお」

　「……そんなことないよ……」実際、こんなことを言われたのは初めて。

　「そんな反応するようじゃあ、男子が放っておかないね」といたずらに笑われて、一人の男の子の顔が浮かんだ。……誰だったかな、あの人。ああそうだ、と、すぐに思い出した。