廊下に上履きを置くと、「夜久さん」と女の子の声がした。見れば、昨日鍵を探していた人。「おはよう」と応えると、女の子は「おはよう」と明るく優しく笑った。そういえば、名前を聞いていなかった。
「名前、なんていうの?」
「え?」と女の子は驚いたような顔をする。「あ、えっと……。ヒガキ。ヒガキ、ホノカ。曜日の日に生垣の垣、稲穂の穂に香りで、日垣穂香」
「ぴったりな名前だね」
「え、そうかなあ……」合ってない名前なんてある?と、日垣さんは笑う。
「夜久さんはさ」と日垣さんは続けた。「リンってどんな字を書くの? 凜とした……とかの凜?」
「ううん」とわたしは首を振る。「車輪の輪を糸偏にした漢字」
「車輪の輪を……」日垣さんは言いながら天井を見上げた。「へええ、そんな漢字があるんだ」とわたしを見る。「でもなんか、夜久さんらしいかも」と笑う。
「名前、なんていうの?」
「え?」と女の子は驚いたような顔をする。「あ、えっと……。ヒガキ。ヒガキ、ホノカ。曜日の日に生垣の垣、稲穂の穂に香りで、日垣穂香」
「ぴったりな名前だね」
「え、そうかなあ……」合ってない名前なんてある?と、日垣さんは笑う。
「夜久さんはさ」と日垣さんは続けた。「リンってどんな字を書くの? 凜とした……とかの凜?」
「ううん」とわたしは首を振る。「車輪の輪を糸偏にした漢字」
「車輪の輪を……」日垣さんは言いながら天井を見上げた。「へええ、そんな漢字があるんだ」とわたしを見る。「でもなんか、夜久さんらしいかも」と笑う。