時計は七時十分。私室のベッドの上。

 血に砂でも混じったように、全身がざわざわした。どくん、どくんと一定の間隔で脈打つ胸の奥は、その砂が固まっているように重苦しい。

 昨日の放課後を思い出すと、絶望感に発狂しそうになる。取り返しのつかないことをしてしまった。どうしてこんな時に限って、朝から目を覚ますのだろう。いつもなら“俺”のはずじゃないか。“おれ”じゃない。

 重苦しさを増す胸の奥にうずくまり、自分を落ち着けようと頭を抱える。大丈夫、大丈夫、とまじないのように自分へ語り掛けるけれど、そんな自分の声さえ聞こえない。ただ、どうしようもない後悔と絶望感が、ざわざわと全身を駆け巡る。

 おれはこの世に存在しない。いつか、どこにもなにも残さずに消えていくのだ。そんなおれに、他者と関りを持つことなんて許されていない。

 おれもそうなんだけど――。昨日の自分の声が耳の奥に蘇って、叫びだしそうになる。頭の中が真っ白になって、乱れた呼吸と喉の震える音が耳に届く。

 大丈夫、いいや大丈夫なんかじゃない――。花占いのように、逃避への安心と事実への恐怖が巡る。

 ふと枕元の目覚まし時計が叫びだして、おれの中には静寂が戻った。深い深い純白の静寂の中、おれは“この世界”にある扉を開いた。