どくんどくんと心臓が早鐘を打つのを感じていると、彼女は机に鞄を下ろした。

 「普段はどこに持ってるの」

 「えっ?」

 「鍵。なくしもの」

 「えっと、鞄の中に……」

 「一緒に入れたもの、取り出したりした」

 「予備のポケットティシュを……」

 「それはいつ出した」

 「お昼に……」食後に口を拭いたのだ。

 「その時かもしれないね。昼食は教室で摂ったの」

 「うん……」

 「それなら近くにありそうだけどね」

 そう言って、彼女はしゃがんできょろきょろした。

 「えっ……ちょっと、なにしてるの?」

 「鍵」

 「え?」

 「家の鍵でしょう。ないと困るよ」

 「そう……だけど……。え、そんな、いいよ別に……自分で探すから」

 気持ちは彼女の元へ駆け寄って、いいからいいからと立ち上がらせているのだけれど、頭がそれを拒否して、現実は自席から話しかけるに留まっている。

 「一人より二人」

 「そうかもしれないけど……。なんで……?」

 ふと彼女は動きを止めて、儚げな美しい目元で床を見つめた。「なんで……だろうね」

 そう言って、彼女は自嘲するようにふっと笑った。またきょろきょろと床を探し始める。私も、机の中や鞄の中など、ありそうな場所を探した。