昇降口で肩に腕を回すと、「やあ少女」と高野が言った。私は当然、「やあ少年」と返す。

 「暇か?」

 「はい?」

 色白な顔がきょとんとしている。

 「今日、暇か?」と私は尋ね直した。

 「場合による」と高野。

 「どれ、わっちと一つ、中庭ででも屯せんか?」

 「タムロ……? 他に誰がいるの?」

 「誰もおらん。先客くらいじゃ」

 高野は少し考えるような顔をしてから、頷いた。

 「いいよ」屯と言えるかわからないけどと苦笑する彼に、なにを言う、と返す。私ら二人が語らえば地震さえ起きるほど賑やかだぞ、と。