よく晴れた朝だった。昨夜、ぱらぱらと雨が降っていたけれど、地面が濡れていることもなく、ベッドの上で音が聞こえていなければ、雨が降っていたことも知らなかっただろう。

 階段を上る高野を見つけた。そこまで駆け上って、「よっ、少年」と背を叩く。「やあ少女」と彼は白い歯を見せる。

 「少年、腹は減っていないか?」

 「えっ」と言って、高野は苦笑した。「おれ、そういうイメージ?」

 「早弁の高野じゃん」

 「うわ、その冠嫌すぎる」と彼は笑う。

 「で、そろそろお腹空かせる頃かと思って」

 「おれがお腹空いてるって言ったら、なにかあるの?」

 「まさか。まあ、道端につくしが生えてたことくらいは教えてあげるよ」

 「佃煮にでもしようかね」

 「ハンバーグに混ぜてももおいしいよ」

 「へえ、ハンバーグかあ。押村さん、色々知ってるね」

 「これが友におっさん臭いと言われる所以じゃろう」と独り言のように言うと、「その喋り方じゃろうのう」と高野が言った。