席に着くと、「いただきます」と言ってロールパンを持った。一口、かじる。

 この世の中に、自分のことが好きな人というのはどれほどいるだろう。俺は自分が大嫌いだ。どうしようもなく愚かだから。救いようのない愚か者なのだ、俺は。あまりに貪欲だ。なにかを手に入れたいと望んだかと思えば、それを持たない自分を求める。そんな自分を理解する度に、叫びだしたくなる。腹の奥に燻る怒りに似た感情を、そうでもしなければごまかせないのだ。そうして、少し吐き出しもしなければ。

 「パン、硬かった?」と、正面の席に座った母が問う。「いや、大丈夫」と俺は答える。

 「本当、朝に弱いよね」と彼女は笑う。

 「学校なんて、なんのために行くんだろうね」

 「うーん」と母は考えるふりをする。「そうねえ、その捻じ曲がった心をまっすぐに戻すためじゃない?」といたずらに笑う。俺は「そうか」と笑い返す。

 ずっと前から、学校は大嫌いだ。どうしてあんな騒々しいところに行かなければならないのだろうと思う。どうしてあんな、不自由な場所に行かなければならないのだろうと。あそこでは自由な瞬間が一つもない。自由な場所もない。どこにいても近くに人がいる。人の声がする。それがどうしようもなく苦痛だ。

 「ん、玉子おいしい」と母が満足げに言う。「味付けばっちりだよ」と言っては、「まあ、塩コショウだけなんだけどね」と自嘲気味に笑う。

 俺も一口、オムレツを食べる。「うん、おいしい」と答えると、「ね」と母は笑った。