アーチ型の窓から射し込む朝陽で目が覚めた。窓を縁取るように、壁に鎖のような縄模様が彫られている。その向かいの壁には絵画を飾っている。家具は白とくすんだ黄色で統一している。

 ダマスク模様の彫られた、クローゼットの扉を開く。右端に掛かっているのは、女子の制服。それに嫌々袖を通すのは、ただ学校が好きじゃないからか、自分を女だと思っていないからか。

 深い青のベルベット調のジャージをひんやりした床に脱ぎ捨て、ワイシャツを着る。ボタンは左、穴は右。

 手すりを使わず、ベージュの絨毯が敷かれた螺旋階段を下りる。玄関の白い扉にある擦りガラスから、明るい光が入ってきている。玄関の白い石と、そこに置いてあるベージュの玄関マットを、柔らかく照らしている。

 クロスの敷かれたダイニングテーブルには、すでに食事が並んでいた。暖炉の上の壁に掛かっているテレビでは、朝の情報番組が流れている。

 「ロールパンとオムレツにしてみた」と母は楽しそうに話す。

 「……親父は?」

 「もう描いてる。面白いのが描けそうなんですって」

 「……そうか」

 腹の中に、嫌なものが、汚い感情が広がる。――妬ましい。

 父は画家だ。個展を開いてはしばらく無職のように過ごす、というのを繰り返している。気まぐれな人だ。母はインテリアデザイナー。フリーランスで働いているが、毎日それなりに忙しそうにしている。父があんな様子なので、母はこれくらいでないと釣り合いが取れないのかもしれない。