昇降口へ向かう途中、一メートルほど先ではしゃぐ三人の声を聞きながら、静がおれを呼んだ。

 「今日、この後予定ある?」

 「ううん、なにも」

 「それなら……うち、こない?」

 「うん、いいよ。どうかしたの?」

 「どうせなら……」

 友達っぽいことしたいっ、と静は妙に感情を込めた声を上げた。

 校門を出て、おれが静と日垣にくっついていくと、「高野ってばハレムでハーレム状態を満喫するわけ?」と、押村さんが目ざとく突っ込んできた。

 「明美には渡さないよっ」と腕を絡めてくる静に続いて、「なによ高野山君、今日は私って言ったじゃない」と日垣がもう一方の腕にくっついてきた。

 「ヒューヒュー」、「アツいねえ」と青園と押村さんが茶化す。「高野にもついに春がきたぞーっ」、「一生無縁だと思ってたのにっ」と。

 「麻酔銃ねえかな」と呟くと、「くまじゃないんですから」、「いのししじゃねえよ」と青園と押村さんが声を重ねた。