自動ドアの前ですれ違った人が財布を落とした。それを渡してから店の中に入った。すぐ左手にある家電量販店の前で、福引の抽選会が開かれていた。そのそばでポケットティッシュが配られている。ティッシュを受け取って、勧誘を「今日は親が一緒じゃないので」と断った。
エスカレータで二階に上がり、当たりを見回す。進むべき方向がわかると、「えっ、明美じゃん」と見慣れた顔が二つ、近づいてきた。二人はそれぞれ水色と黄色のシャツワンピースを着ている。
「え、明美一人?」と二人は声を重ねる。
「うん。いやあ偶然だね。二人は?」
「お友達デート」と、衣類を黄色で揃えている志穂が、水色で揃えている真緒に腕を絡める。
「洋服見にきたんだあ」と真緒。
「仲良しだねえ、お揃いなんか着ちゃって」
からかうように言うと、「これ、偶然なんだよ」と志穂が笑う。
「一緒に買ったわけでもないしねえ」と真緒も続く。
「すごいねえ、そんなことあるんだ」
二人は学校でもずっと一緒にいるけれど、このように性格や感性がよく似ているから、互いに一緒にいやすいのだろう。
「で、明美は一人でなにしてるの?」志穂が言った。
「くまちゃんを探しにね」と私は答える。
「へええ、本当に好きなんだね」
「テディって呼ばれてるもんね」と真緒が笑う。「そうそう」と私も同じように返す。
「ところで、うちらこれからお昼食べるけど、よかったら一緒にどう?」と志穂。
「ええー、魅力的だなあ。なに食べるの?」
「まだ決めてないけど、やっぱりマークかなあって」
「ああ、まじかあ……」
ハンバーガーの誘惑。しょっぱいポテトフライに甘い飲み物――。実に魅力的だ。ただ、今日は素敵なくまちゃんとの出会いがある気がしてならない。昼食のために一目惚れしたくまちゃんを連れて帰れないなんてなったら切ない。
「いやあ、すっごい魅力的だけど、今日はいいかな」
「おいしいハンバーガーよりもくまちゃんが大切?」
「今日は素敵な出会いがある気がしてね」
じゃあデート楽しんで、と言って志穂の肩を叩いて、私は雑貨屋を目指す歩みを再開した。
エスカレータで二階に上がり、当たりを見回す。進むべき方向がわかると、「えっ、明美じゃん」と見慣れた顔が二つ、近づいてきた。二人はそれぞれ水色と黄色のシャツワンピースを着ている。
「え、明美一人?」と二人は声を重ねる。
「うん。いやあ偶然だね。二人は?」
「お友達デート」と、衣類を黄色で揃えている志穂が、水色で揃えている真緒に腕を絡める。
「洋服見にきたんだあ」と真緒。
「仲良しだねえ、お揃いなんか着ちゃって」
からかうように言うと、「これ、偶然なんだよ」と志穂が笑う。
「一緒に買ったわけでもないしねえ」と真緒も続く。
「すごいねえ、そんなことあるんだ」
二人は学校でもずっと一緒にいるけれど、このように性格や感性がよく似ているから、互いに一緒にいやすいのだろう。
「で、明美は一人でなにしてるの?」志穂が言った。
「くまちゃんを探しにね」と私は答える。
「へええ、本当に好きなんだね」
「テディって呼ばれてるもんね」と真緒が笑う。「そうそう」と私も同じように返す。
「ところで、うちらこれからお昼食べるけど、よかったら一緒にどう?」と志穂。
「ええー、魅力的だなあ。なに食べるの?」
「まだ決めてないけど、やっぱりマークかなあって」
「ああ、まじかあ……」
ハンバーガーの誘惑。しょっぱいポテトフライに甘い飲み物――。実に魅力的だ。ただ、今日は素敵なくまちゃんとの出会いがある気がしてならない。昼食のために一目惚れしたくまちゃんを連れて帰れないなんてなったら切ない。
「いやあ、すっごい魅力的だけど、今日はいいかな」
「おいしいハンバーガーよりもくまちゃんが大切?」
「今日は素敵な出会いがある気がしてね」
じゃあデート楽しんで、と言って志穂の肩を叩いて、私は雑貨屋を目指す歩みを再開した。