「友達を使い走るとか最低じゃないですかあ?」と青園が挑発して、「ちょっとお願いしたのよ」と押村さんがそれに乗る。

 「違うでしょう、押村先輩のことだから、きっと日垣先輩を脅したんでしょう?」と青園は挑発を重ねる。「ちょっと言い方ひどくなーい?」と言う押村さんに、日垣が「押村さん本当に怖かった……」と続くものだから、「お二人ちょっとおいで」と押村さんが燃える。「こちょこちょの刑に処したげる」と。

 「できるもんならやってみてくださいよ」と言いながら逃げ出す青園に、「千歳ちゃん置いてかないでよ」と日垣が続く。それを押村さんが追う。

 「……気、遣わせちゃってるみたいだね」と綸が苦笑する。

 「いつもあんな感じだよ」

 綸がベンチに着いて、おれもその隣に腰を下ろした。

 綸がはしゃぐ三人をちらと振り返った。

 「あの人の言ってること、よくわからなかった」

 「押村さん?」

 綸は一つ頷いた。「いきなり、謝ってきた」

 「そっか」

 「……君には、なにか言ってた」

 「おれに?」

 「うん」

 そっか、と、おれは口の中で言った。高野山君の次は君か、と。けれどこれに関しては、鋏で紐を切ったような感覚が手の中に芽生えた。先に綸を君と言ったのはおれで、彼女に君と言わせたのは、他ならないおれだった。

 「……押村さんは、君のことが大好きだよ」

 「あたし、あの人のことわかってないんだ」

 「……覚えてないの?」

 綸は少し考えるような顔をして、頷いた。そして、縋るような目でおれを見上げる。「あたしと彼女について、なにか知らないか」と。

 「彼女、すごい本気で謝ってきた。でも、なにもわからなかった。自分と彼女の関係がわからない。過去になにがあったのか、どうして彼女があんなに謝ってきたのか、なにもわからない。……もしも彼女が君になにか話してたなら、教えてほしい。ちゃんと応えたいんだ」

 「わかった」とおれは言った。「でもさ」とも言った。その前に、確認したいことがある。