「綺、」

《やほ、蘭。なんか緊張すんわ》

「…綺だ、」

《うん。や、元気?生きてるのは今確認できたけど、元気かどうかわかんないから、確認》

「ふつう」

《ふつうか。はは、まあ、上等なんじゃん?》




電話の向こうに居るのは綺だ。確かに あの綺で間違いない。得体のしれない感情がこみ上げてきて、溢れそうになる。



真夜中さんに伝言を頼んだ二日前の夜のこと。






『もしまた缶コーラの高校生に会ったら渡してください。私の番号です』

『めちゃくちゃ偶然が重なって、菩薩の人以外で缶コーラ買いに来た人に間違って渡しちゃったらどうします?』

『菩薩っぽい顔の人、見抜いてください真夜中さん』

『だいぶ無茶いいますね』

『いいんです。会わなかったら、その時はその時なので』

了解(りょす)。おれこういうの、わりと引き強いっすよ』

『頼りにしてます。お礼はします。はい、あの、廃棄のパン(それ)で』

『だから。それ、おれがあげたやつなんすけどね』