来店したのは真夜中さんと同じくらいか、もしくは少し上に見える男の人だった。まっすぐ飲料コーナーに向かう後ろ姿を見つめる。すると、真夜中さんがこっそり耳打ちをした。
「あの人、常連なんすよ」
「常連ですか」
「レモンサワー2本と、86番の人です。あ、多分レジ来るんで、ちょい待っててください」
その後 すぐのことだった。
“レモンサワー2本と86番の人”は、確かにレモンサワー2本を持ってレジにやって来た。目が合って、何故か軽く会釈をされたので、私も同じように頭を下げた。
「あと86番……を」
「はい」
「…あ、いや。やっぱやめます」
「え?」
「いいです、これだけで」
“レモンサワー2本と86番の人“が真夜中さんにそう言って、お会計を済ませる。「袋いいです」と、会計を終えたレモンサワーの缶2本を抱えた男性は、何故かもう一度私に会釈をすると、自動ドアを抜けてお店を出た。
滞在時間は2分ほどだった。再び静かになった店内。
ちらりと真夜中さんに目を向けると、彼も同じように私を見ていた。