私は無知だ。なにも知らない。
1年半前から、太陽が灯る時間の記憶が止まっている。綺が生きている世界のこと知らないまま、夜だけを越えて同じ世界を生きた気になっている。
「ミヨーさん、朝のコンビニはうるさいすよ」
「…え?」
「珈琲とパンを買うジジイがわんさか。レジが止まらない。だからおれは、夜が好きなんです。接客はほとんどしなくて済むし、そもそも客が少ないから常連の顔、おれでもすぐ覚えられる。最近は話し相手もできました。夜勤だと、バイトに来るのがたのしい」
「え、あの、真夜中さんは急に何を」
「単純に、夜が好きなんですよ、おれは」
真夜中さんの声が、静かな店内に落ちた。