「あげます、それ。賞味期限切れてますけど」

「えぇ……」

「大丈夫すよ。おれいつもそれ食ってるんで」

「当てにならないです」

「まあでもほら、死にはしないんで、きっと。知らんけど」


適当だ、とても適当だ。それでも、真夜中さんなりに気を使ってくれたのだろう。「お腹下したら真夜中さんのせいにします」と言ってその袋を受け取ると、笑われた。



「てか、思い出したんすけど、その菩薩さん一昨日来たかもしんないす」

「え?」

「缶コーラ、買いに来た人がひとり居ました。生憎顔は覚えてないんですけど、高校生くらいの男の子だった気がします。思い返せば菩薩みたいな顔してた」

「話を盛らないで下さい」

「はは、させん。菩薩みたいな顔は多分、嘘です」



缶コーラを買いに来た、高校生くらいの男の子。住宅街の端っこのコンビニで、今どき600mlのコーラを缶で買う人となれば、それはたしかにレアな客なのかもしれない。



「でも、昼間でしたよ」



その言葉に、私は「え」と声を洩らした。