「ちょっと待っててください」そう言って、返事をする前に真夜中さんがバックヤードに入る。1分ほどで戻って来た真夜中さんは色々食べ物が詰まったレジ袋を手渡した。
思わず「なんですかこれ」と聞くと、「廃棄です」とだけ言われた。
「随分急ですね」
「夜長いから。食べ物あった方良くないですか」
「ここで食べろと?」
「おれも食います」
「そういうことじゃないです。お客さん来たらどうするんです?私万引きとか疑われるの嫌ですよ」
「じゃあ店の制服貸しますよ」
「真夜中さんの深夜テンション怖いです」
「ははは」
「笑い事じゃないですよ」
真夜中さんも大概可笑しな人だ。なんとなく、綺とは気が合いそうな気もする。なんて、そんなことを考える私に「冗談ですよ」と笑いながら言う。
真夜中さんの笑った顔は柔らかくて、そこには優しさが込められていた。