深夜1時のコンビニの利用者はそうそういない。この店舗は住宅街の端っこに位置しているから尚更だ。自動ドアは、私が入店したのを最後に一度も開いていなかった。


夜を共に越える人がいたこと。彼はとても可笑しな人で、だけどその可笑しさに安心していたこと。菩薩の心を持っていること。600mlのコーラを飲んでいるのは彼だったこと。そんな彼が、1週間前から突然来なくなったこと。



「なるほど」


ざっと私が今抱える事実と感情をぶつけると、そんな短い返事が返ってきた。

これを深夜バイターの真夜中さんに話すのもどうかと思ったけれど、「どうせ暇だし聞きますよ」と言ってくれたので、その言葉に甘えて私はべらべらと話してしまった、というわけである。


「連絡先とか知らないんすか」

「知らないです」

「学校も?」

「知らないです。名前と、歳と、誕生日くらいしか知らない」