名生 蘭。きみのことが好きだった。
ひとめ惚れだったのか、はたまた何かきっかけがあったか、今はもう思い出せない。
それでも確かに好きだったのだ。バイトに行くのが楽しかった。学校できみのことを見かけるたびに、ひとりでドキドキしていた。
時間にたよって何も出来なかったことを後悔している。力になりたかった、なれなかった。
俺は、きみにとっての光にはなれなかったけれど。
次、もしまた誰かを好きになったら────その時は、今度こそ迷わず手を差し伸べたいと思う。
「名生さん、ごめん……」
独り言のように呟いた情けない謝罪は、この先も彼女に届くことはきっと無い。
どうか、この先の未来がきみにとって優しい世界でありますように。