「あ、来た。好きな人」

「……、」

「久々にこの絡みやっとこうかと思ったんだけど……え、何そのなんかよくわかんない反応」



翌日の夜。公園に行くと、先に来ていた綺が開口一番懐かしい絡みをしてきた。

昨日、杏未や真夜中さんと「恋」についての話をして、しかも綺のことを好きだと確認したばかりだったので、変に緊張してしまい返す言葉がなかった。

きゅっと手のひらを握りしめ、ふー…と小さく息を吐く。



「……久々だからちょっと動揺しただけ」

「動揺されると思わなくて俺も動揺しちゃったわ」



誤魔化すように言う。私の言葉にはっと吐き出すように笑った綺が、流れるように空を見上げた。

ふーと吐き出した息は白かった。綺の整った横顔から目を離し、私も同じ景色を見つめる。冬の空がこんなに美しいことを、私は綺に会わずして知ることはなかっただろう。


去年の夏も秋も冬も、長い夜を越えるためだけに外に出ていた。

空をぼんやりと見上げることはあっても、そこに広がる世界が綺麗だとか、呑み込まれてしまいそうだとか、ましてや星空を見て泣きそうになってしまうことなど、当然あるはずもなかった。