「どーぞ?」

「はあ、どうも…」

「つかハンカチくらい持ってこいや雨上がりのベンチに座れるわけなかろう」

「散歩するつもりだったところをあんたに邪魔されたんだよ」

「えーそうなん。わりーわりー許せ」



雫が残るベンチを、ポケットから取り出した、へんなクマのキャラクターの刺繍が施されたタオルハンカチで躊躇いなく拭きとった綺に促され、私はそこに静かに座る。お尻がひんやりと冷たかった。


白いタオルハンカチでベンチを拭いたらそりゃあ当たり前のように黒く汚れてしまうわけで、「なんかごめん」と謝ると、「なにが?」と返された。

雑なのか、何も考えていないのか。


タオルを指差すと、「朝飯前だわ」と言われた。国語が得意なわけではないけれど、多分、その使い方は間違っていると思う。



「雨の日も関係なくこうやってここに来てんの?」

「うん、まあ。ほぼ毎日」

「何して過ごすの」

「音楽聴いたり、散歩したり、ぼーっとしたり」

「ふうん」