そこには、空白の5年に留まらず、綺が抱えていた感情全てが記されていた。
綺麗なものだけじゃない。言われるまで知らなかった 綺の黒い感情も、後悔も、全部だ。
この文章を打つのにどれだけ時間をかけたのだろう。どんな気持ちで連絡先からわたしの名前をタップしたのだろう。
綺にとって、名前を見ることすら苦しいはずのわたしと向き合うことは───どれほど勇気のいることだったのだろうか。
「返信……しないの?」
「しない……、しちゃダメなやつだと思うから」
返事をしたら、綺は優しいから、きっとまた余計な気を使わせてしまう。
届いたよ。綺の気持ち、ちゃんと届いた。欲を言えば、目を見て言葉を交わしてさよならをしたかったけれど、それでも良い。
綺だって、言わないだけでセンサイだったみたいだ。気づけなくてごめんね。長い間、苦しい思いをさせてごめんなさい。
もう平気だよ。今のわたしは、誰かの優しさに甘えなくてもちゃんと生きていけるから。
「全然 大丈夫っ、!」