一人の夜が好きだった。誰にも邪魔されない、私だけの時間だった。
住宅街のはずれに位置する公園。酔っ払いも不審者もいない、私だけの秘密基地のような場所。そこに突然土足で踏み込んでくるやつがいたら、不快に決まってる。
「言ったろ。俺は、蘭と話がしてみたかったんだ」
「…なんで」
「過去に2回、車でここを通った時に蘭の姿を見たことがあるから。もしかしたら毎晩ここにいんのかなって、ずっと気になってた。深夜の公園に1人でいるってさ、どんな理由でそこにいるのか知りたかった。そんで今日、ようやく親の目を盗んで家を抜け出すことに成功したわけだ。まーじでハラハラした。ドアってさ、神経注いだらまじ無音で閉められんのな。知れてよかった」
「……はあ?」
「てな感じで、成功したからとりあえず会いに来てみたってこと」
「意味わかんない」
「俺もだいぶわかんねーけどな」
衝動には逆らえんのだわ、
親の目を盗んで私に会いに来た変な男 改め日之出 綺が言う。
ドアを無音で閉められること、私は知らなかった。堂々と母に送り出されて家を出ているから、忍ぶという行為をしたことがなかったからだ。