綺が落とした、心からの本音だった。
やえに謝りたい。
繋いだままの手をぎゅっと握られる。その手は少しだけ震えていて、私は包み込むように握り返した。
大丈夫、大丈夫だよ綺。
貴方はぜったい、大丈夫。
根拠のない「大丈夫」だったけれど、それが、今の私が言える一番の言葉だと思った。
「じゃあ謝ろうよ」
聞く話によれば、西本やえの連絡先は、5年前と変わっていないとのことだった。LINEの友達にはいないけれど、電話番号とメールアドレスは、電話帳の中に残したまま消せていないと綺は言う。
「電話が怖いなら、文字に頼っていいと思う。もし返事がなくても、その時はその時だよ。5年も連絡を取っていなかったんだから、それは綺が悪いわけでもやえさんが悪いわけでもないから。綺が、ちゃんと納得できる形で終わらせることが大切だから」
「…うん」
「言えなかったこと、全部言った方が良い。勇気を持つならとことんもたないと勿体ないから。言い損ねて後悔したら元も子もない」
「……うん、だよな、うん」