「普通から逃げたから、綺に会えたし、杏未とも仲直りできた。真夜中さんとも知り合えた。綺と見た星も、学校に行っていた頃の私は知ることができなかったから。だからね、悪いことじゃないんだよ、逃げるのって」
逃げて良い。
逃げていいから、その代わり 自分のことをちゃんと受け止めてあげよう。
「綺は、どうしたい?」
ゆっくりと身体を離し、綺の瞳を見て、もう一度問う。目尻が少し濡れていた。綺の口が開き、途切れ途切れに言葉を紡ぐ。これから綺が紡ぐ音を、一音たりとも逃したくなかった。
「俺は……やえには会いたくない、向き合いたくない。……このまま、全部なかったことにしたい」
「うん」
「……けど、言わなきゃいけないこともある。あの時何も言わずに離れてごめんな、ずっと味方でいられなくてごめんねって、」
「うん」
「……やえに、謝りたいよ、俺」