「綺はどうしたい?どうなりたい?これから」

「俺は、」

「私たち、まだ子供だから。ワガママなんかいっぱい抱えて生きていいんだよ。勝手にひとりで大人になろうとしないで、綺。好きなこといっぱい好きっていって、嫌いなことから逃げていいじゃん。ねぇ、綺」




『完璧になろうとしなくていいじゃんか。言ったろ、逃げたとしても、過去はどうしたってついてくる。その過去を連れた自分ごと受け止めて、それが人生(じぶん)なんだって受け入れないと、いつまでたっても自分のことは好きになれない』



綺が、そう言ってくれたんじゃないか。

私にだけにいえたことじゃない。綺だって、私と同じだ。同じくらい脆くて、弱くて、人間らしい生き方をしてると思う。



「……私、学校に行きたいって思ったよ」



綺の身体を抱きしめながら、ぽつりと呟く。綺から返事はなくて、代わりにズズッと鼻を啜る音が聞こえた。