「蘭が変わっていくの、嬉しくて、……怖かった」
私の知っている日之出綺は、好奇心旺盛で、少し雑で。コーラは缶で飲むし、スイカバーを生きがいにしていて、私なんかにひとめぼれをする変人。
だけど本当は───誰よりも優しくて繊細な人。
置いて行かないで。縋るように背中に回った腕に力がこめられる。強い力で抱きしめられたので、同じくらいの力で私も抱きしめ返した。
どうにもできない過去がある。
立ち止まるしかできないことがある。
それでいいじゃないか。話合って向き合うことは大切なことだけど、心を殺してまでやらないといけないことではない。
終わりが見えないことは苦しい。いつまで続くかわからない不安に捕らわれるのはしんどい。だけど向き合うことはできない。怖い、つらい、どうしていいかわからない。
「自分で終わらせよう、綺」
だから、自分で打つしかないのだ───いちばん納得できる終止符を。