私がもっと早く杏未と向き合うことができたら。綺や真夜中さんと出会えていたら。マイやシホの言葉をもっと軽く流せていたら。


返ってこない時間が、こんなにも恋しくて、やるせない。


「そりゃあ、蘭ちゃんがいたらもっと楽しかっただろうなって思うよ」



チュリトスを握る手に力が籠る。砂糖がぽろぽろと零れて手の甲から滑り落ちていった。


自分で言いだしたこととはいえ、叶わなかったその事実と向き合うことは苦しい。自分がどうしようもなくダメな人間に思えてくるのだ。

俯くと、「でもさぁ」と杏未が続けた。

その声は決して暗くはなく、繕いも感じなかった。


「例えば蘭ちゃんが無理してでも学校に来続けていたとして、わたしはきっと助けることはできなかった気がする。だって弱いもん、わたし。マイちゃんたちが怖くて見て見ぬふりしてたと思うし、木村ちゃんとも仲良くはならなかったし……なにより、月に一回レターセットを選ぶことを楽しいだなんて感じなかったと思う」

「杏未……」

「だから、自分のこと枷に思わなくていいよ蘭ちゃん。わたしも蘭ちゃんも、あの時間があったから今こうなってる」



杏未がにひっと人懐こい笑みを浮かべる。泣きそうになるのを抑えて、私も同じように笑った。