「……無性に、星見てぼーっとしたい」
「さては蘭、バカにしてる?」
「してないよ。綺が大切にしている概念を、私も知りたいって思ったの。……人を動かすのは願望なんでしょ。いま、綺と星が見たい」
私がそういうと、綺はニッと口角をあげ、溶けかけたスイカバーをしゃくしゃくと平らげた。
そんなに一気に口に含んだらアイスクリーム頭痛(医学的にも本当にこういう呼び方をするらしい)が起きちゃうよ、と言おうとすると、言葉にする前に綺が顔をしかめて頭を押さえるものだから、思わず笑ってしまった。
「そんなに一気に食べたらそうなるに決まってるじゃん」
「アイスを優雅に食うのと星を優雅に食うのとじゃ、俺にとっては訳が違う」
「でもアイスクリーム頭痛、けっこうしんどいよね」
「まじでそれは分かる」
綺はバカだ。そしてとても変だ。
だけど、一緒にいてとても楽しい。
「じゃあ、行きますかぁ───天体観測に」
その日は、真夜中さんが欠伸をしながら出勤する姿とすれ違う前にコンビニを出た。