ピンっと額をはじかれた。それもかなり痛い。不意打ちの強烈なデコピンには太刀打ちできずしっかり正面からくらってしまった。
額をおさえながら綺に視線を映せば、奴はあろうことか私の反応を見てけらけら笑っていた。
「蘭のわるいとこな」
「っはあ?」
「全部顔に書いてある。自分はどうしてこんなにダメなんだろうって」
ぎくりと肩をゆらした。図星だったからだ。目を瞬かせる私に、綺は「あのなぁ蘭、」と優しい口調で言葉を紡ぐ。
「完璧になろうとしなくていいじゃんか。言ったろ、逃げたとしても、過去はどうしたってついてくる。その過去を連れた自分ごと受け止めて、それが人生なんだって受け入れないと、いつまでたっても自分のことは好きになれない」
「…、そうだけど…」
「蘭は変わろうとしてるし、前に進んでる。焦んなくていいし、自分がダメだなんて思う必要もない。蘭は蘭で、自分ができることをやんな」
ひりひりと痛む額と、かけられた言葉にきゅっと唇を結んだ。