「あと、蘭が太陽に慣れつつあるならそれも良いことだなって」
「でもそれは、綺が夜がだめって言うから」
「杏未とも和解して会えるようになってたろ。その邪魔もしたくなかったし、ずっと人と居るのは疲れるかなーとかそういう心配もしてたんだよばぁか」
こつん、とおでこを突かれた。綺なりに私を気遣ってくれていて、杏未との関係を応援してくれていたらしい。
綺と毎日のように夜を歩いていた頃がなつかしかった。綺と夕方に会うようになって、杏未とも週に1度会うようになって、夜に出歩く数は減った。私の生活は、これまでに比べたら幾分かもっともらしくなった。
だけどでも、私を動かしてくれたのは綺であり、真夜中さんだ。夜を味方につけた私に与えられた出会いがなかったら、私はこうなってはいなかった。
今でも、夜が一番私をわかってくれているような気がしているのだ。
「綺、心配してくれてありがとう」
「うん」
「…でも、昼間外に出ようが、夜の長さは変わんないよ」
「たしかしたかし」
綺には夜が良く似合う。夜の中にいる綺が、私の記憶に焼き付いて離れない。
「まあでも、夏だし。外で会うにはちょっと暑いしまぶしいかもな」
こうして、私たちは再び夜───20時前後に、公園で落ち合わせるようになった、というわけである。